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鎌倉アルプス(天園ハイキングコース) 標高159m
自分の足で登らない山シリーズ第19弾 厳冬期、雪のアルプスに挑む |
◆ 2014年2月16日
この時期、冬のアルプスは雪の世界である。今日は、命知らずの企画である。何を思ったか、厳冬期、無酸素、サポートなしのアルプス単独登頂をやろうという暴挙に出たわけである。が、スイス行きの飛行機のチケットはまだ買っていない。
って、まあ、タイトルでバレているか....
だいたい、日本のアルプスだって北、中央、南と3つもあって、本家のヨーロッパアルプスからいわせるとインチキくさいのに、よりにもよって標高200mにも満たない山、というよりも丘に、鎌倉アルプスなどという神をも恐れない大それたネーミングをした人が過去にいるわけであるが、断じてそれは私のせいではない。
それにしても今年は雪の当たり年である。2月8日に降った大雪がやっと融けたと思ったら、2月14日には再びの大雪で、首都圏は大混乱である。山梨では、凍死者もでて、県全体が陸の孤島と化しているらしい。
翌日、すなわち15日は曇っていたが、今日16日は晴れの予報で、どこへ行くか迷う。なにしろ大雪のせいで交通機関や道路の混乱がまだ残っていて、遠出は無理である。リハビリ中でまだ完全復活でもない体だ。
というわけで、8時10分、鎌倉駅に降り立つ。横須賀線は通常運転だが、晴れた日曜日にしては、駅前は人が少なくて寂しい。
鎌倉アルプスは別名天園ハイキングコースとも呼ばれ、鎌倉の三方を囲む山の北側を周回するコースである。一般的には、西は瑞泉寺、東は建長寺が起点で、いずれも背後に山を背負った寺である。最高峰は、大平山、別名天園といい、標高はたった159m。今日は、反時計回りにしたので、登山口の瑞泉寺を目指そう。
大塔宮行きバス停に向かうが誰も並んでいない。嫌な予感がして時刻表を見ると、そこには写真2のとおり、運転見合わせを告知する張り紙があった。
1 鎌倉駅 2 大塔宮行きバス停
ショックだが、タクシーもおらず、しかたがないので、瑞泉寺まで歩くことにする。小町通りは閑散としているが除雪はされているようだ。GPSが電波を受信しないので、空が開けた若宮大路に出る。
3 小町通り 4 若宮大路歩道
さすがに真ん中の歩道、段葛は除雪されていない。
5 段葛 6 鶴ヶ岡八幡宮
鶴ヶ岡八幡宮に着いた。ここから歩道がなくなり、雪の中を歩くようになりそうなので、早くもチェーンアイゼンを着ける。
それは正解だった。ただでさえ狭い金沢街道は、雪と氷の世界で、行き交う車も少ない。凍った道を歩いていると、知らないおじさんに「いいもの履いてるなー、それなら安心だよな」と大声でいわれる。たしかに。
チェーンアイゼンは、本来このような凍りついた平地を歩くためのものなのかもしれない。しかし、土なら良いが、直接アスファルトの上を歩くのは不快なので、わざとできるだけ雪や氷があるところを選んで歩かなくてはならない。街中なのでスパッツは大げさだろうと、付けなかったが、これが失敗で、結局最後までそのまま歩いてズボンの後ろはビショビショになるという悲劇がおこるのを、この時はまだ知らない。
7 金沢街道 8 岐れ道
鎌倉宮へ行く道と金沢方面に行く道の分岐は、岐れ道と呼ばれている。
ここを左に入るとますます道が狭くなり雪が多くなった。これではバスも運休するだろう。突き当りがバスの終点の鎌倉宮(大塔宮)である。
9 鎌倉宮へ 10 鎌倉宮
鎌倉宮を右折してさらに細い道を登っていく。除雪作業の真っ最中である。
11 瑞泉寺へ 12 瑞泉寺山門
トイレへ行こうと思ったが、なさそうなので仕方なく拝観料200円を払って、瑞泉寺の中に入る。料金徴収所の目の前にトイレがあったので、本来料金を払う必要があったのか微妙なところであるが、後から気がついたのでは遅い。料金を払った手前、トイレだけというのも何なので、奥に入ってみた。しかし、瑞泉寺は予想よりずっと奥深く、しかも足元が悪いので歩きにくい。途中で引き返すと、料金所の人に中を見た方がいいよ、と言われるが、時間がないので、と言い訳して瑞泉寺を出た。夢想国師の庭を見る機会を一つ逃してしまった。
結果的には、200円の有料トイレである。これが拝観料500円だったら、我慢して、山の中で.....かもしれない。
門の手前を右折するところに写真13の標識があり、少し上にアルプスアタックルート、別名天園ハイキングコースの入り口があり、左折する。9時13分、いよいよ登頂開始である。
13 天園ハイキングコース標識 14 天園ハイキングコース入口
15 天園ハイキングコース案内図
最初からかなりの雪で、しかも標高が低いので湿ったベチョベチョの雪である。水たまりも深い。意外とこんな時に靴の防水性が試されるのかもしれない。上から長靴を履いたおじさんが降りてきた。地元の人の散歩だろうか。
16 大平山へ その1 17 大平山へ その2
18 大平山へ その3 19 大平山へ その4
20 大平山へ その5
登るに従って、雪の状態がマシになってきた。途中でこれから歩く尾根を一望できる場所もあった。
21 大平山方面の尾根を俯瞰する
22 大平山へ その6 23 浄明寺方面の住宅地
24 浄明寺方面への道 25 大平山へ その7
写真25の地点で尾根に出たようだ。気温は、9℃だった。目には見えないが、雪はかなりのスピードで溶けているのだろう。
26 大平山へ その8 27 気温計
右手から女性の声の放送が聞こえる。何だと思ってよく聞いていたら法要の時間になったので集合してください、とか何とか言っている。鎌倉霊園がすぐ東側にあるので、そこだろう。雪山気分がすこし興醒めである。
28 大平山へ その9 29 大平山へ その10
足跡によると、歩いたのは、まだ一人か二人、ストックを使っている。おそらく昨日だ。
30 大平山へ その11 31 ストックの跡
32 大平山へ その12 33 大平山へ その13
34 大平山へ その14
35 樹間から富士山を望む
36 大平山へ その15 37 大平山へ その16
38 大平山へ その17 39 大平山へ その18
しかし、鎌倉で雪山気分が楽しめるのはラッキーである。なにより、遭難するおそれがなく気楽なのがいい。
40 鎌倉宮方面分岐 41 大平山へ その19
42 大平山へ その20 43 大平山へ その21
写真42によると危険な岩場があるらしいが、巻き道を行く。分岐があった。ここを右折すると金沢方面に続く竹林の美しい道であるが、この雪では長靴かトレッキングシューズが必需品だろう。
44 金沢八景・文庫方面への道
45 天園休憩所看板
このあたりのピークの尾根を天園というらしい。
東郷平八郎が名づけたというが本当だろうか。
休憩所があり老夫婦が雪の中で苦労して開店準備をしていた。ジムニーがあるので細い車道が通じているのだろう。下の先ほどの金沢方面からの道かもしれない。
46 天園休憩所 47 雪に埋もれたジムニー
すぐ上にもう一件の休憩所があるが、こちらは無人である。自動販売機の横には、標高159.4mの横浜市最高地点の標識があった。天園が最高地点だったとは知らなかった。以前、大岡川の源流探索で円海山が最高地点だと書いたら、第3位だとご指摘を受けて訂正したことがあった。ちなみに、第2位は大丸山(金沢区釜利谷町:158.9m)、第3位は、円海山(磯子区氷取沢町:153.3m)である。全部違う区にあるのが面白い。
48 天園峠の茶屋 49 横浜市最高地点標識
茶屋の屋根からは、雪解けの水が雨漏りのように降り注いでいる。しかし、ここからみる景色は素晴らしい。
50 茶屋から鎌倉市街・伊豆半島・相模湾・大島を望む
さらに進むと今度は右側にゴルフ場があり、コース越しにみる横浜市街地方面の景色が良い。
51 天園から横浜市街を望む
52 天園トイレ前の水道 53 大平山へ その22
水道はなぜ飲めないのか不思議である。こんな山の頂上に井戸があるのだろうか。
54 大平山へ その23
大雪原?が広がる雄大な景色である。
55 大平山へ その24
56 天園の雪原
雪原の向こうに写真57のようにちょっとした岩山があり登る。左側に道があるのだが、何故か雪の斜面の中央を直滑降で降りる女性がいる。アイゼン他冬山完全装備の人だったので、わざと雪の中を歩いているのだろう。その女性の顔がにやけているのを私は見逃さなかった。楽しそうではある。きっと最近買った本格的冬山装備を使いたくて我慢できなかったに違いない。
登り切ったところに大平山山頂標識があった。10時37分の到着である。
57 大平山へ その25 58 大平山山頂標識
山頂には親子がいた。こちらはアイゼンなどのすべり止めなしだが急斜面大丈夫だろうか。
59 山頂の親子連れ
ここからも右手の眺めが素晴らしい。ランドマークタワーが近い。
60 大平山から横浜市街を望む
61 写真60のズーム
今日のハイライトとも言える天園、大平山から次の目的地である建長寺の上を目指す。
62 勝上献展望台へ その1 63 勝上献展望台へ その2
64 勝上献展望台へ その3 65 勝上献展望台へ その4
66 勝上献展望台へ その5 67 勝上献展望台へ その6
68 覚園寺・今泉台住宅地十字路 69 勝上献展望台へ その7
ロープを使う岩の難所を越える。倒木は雪の重みのせいだろうか。
70 勝上献展望台へ その8 71 勝上献展望台へ その9
72 樹間からの展望 73 建長寺道標
建長寺の古そうな石の道標を通りすぎる。
74 石切り場?
75 今泉台と横浜市街
迂回路があったが、その工事が妨害されたらしく、業者さんのすさまじい怒りが写真77に残っていた。
76 迂回路分岐 77 警告書
11時28分建長寺の入り口に着いた。大きな看板があり、ここから先は建長寺の境内なので拝観料100円を払うようにという御触れである。料金は下で払うらしい。
78 勝上献展望台 その1 79 勝上献展望台 その2
すこし入ったところに、展望台がある。すると5〜6人の人が上がってきて、展望台の雪かきを始めた。建長寺の人らしい。雪かきは慣れていてあっという間に終わった。2回目の雪だし、境内をいやというほど雪かきしたのだろう。
80 勝上献展望台 その3
ここ勝上献展望台からの眺めは、このコースでも随一だろう。結構多くの人がいるが、カメラを構えたり景色に見入ったりでみんな感嘆の声を上げている。ただ、殆どの人は、富士山だけはわかるものの、それ以外の地形である大島や丹沢、箱根が見えていることを理解していないようだ。大島をさして江ノ島と言っている人がいて、なかなか面白かった。
81 勝上献展望台から鎌倉市街・相模湾・大島・伊豆半島を望む
82 勝上献展望台からの大島ズーム
大島の三原山砂漠は雪で白く輝いている。
83 勝上献展望台から富士山・箱根・丹沢を望む
写真83は、中央の富士が左に箱根、右に丹沢を従えた、鎌倉ならではの位置関係の絶景である。
84 勝上献展望台から富士山ズーム
富士山の手前に広がる鎌倉山、藤沢市街地、足柄の山々とのコントラストが素晴らしい。
85 勝上献展望台から丹沢ズーム
丹沢は雪があるだけで、3000m級の立派な山に見えるから不思議である。
建長寺勝上献展望台からいよいよ下山であるが、建長寺ではなく、少し先の明月院に降りる。こちらはタダである。
86 明月院へ その1 87 今泉台住宅地への道
今泉台に通じる道も雪が凄い。
88 明月院へ その2 89 明月院へ その3
90 明月院へ その4 91 明月院へ その5
人家のある場所に出ると人一人分が歩けるよう除雪されていた。
92 明月院へ その6 93 明月院へ その7
チェーンアイゼンを外して、下界に生還である。
94 明月院へ その8
写真94の車は動いた形跡がない、道が細く坂がきつい鎌倉はこういう時は不利である。そして、下って行くと明月院に着いた。世に言うあじさい寺である。
95 明月院 その1
96 明月院 その2
97 明月院前の藁葺き屋根
98 明月院解説板 99 北鎌倉駅へ その1
雪のせいでさらに落ち着いた雰囲気の街並みを北鎌倉駅に向かう。
100 北鎌倉駅へ その2 101 北鎌倉駅へ その3
線路に突き当たったので右折して北鎌倉駅に向かう。踏切をわたって道はさらに源氏山方面に続いているが、残念ながらアキレス腱の痛みが出てしまったので、別の機会に譲ろう。距離や標高差は大したことはないが、やはり湿った雪の山を歩くのは、結構大変である。
102 円覚寺 その1 103 円覚寺 その2
円覚寺といえば、国宝の舎利殿が中学の教科書に出ていた記憶があるが、実は、鎌倉には鎌倉時代の建物は殆ど残っていないらしい。荏柄天神社は、唯一鎌倉時代に建造されたものだが、江戸時代に鶴岡八幡宮から移築されたものといわれており、最初からそこにあったわけではない。舎利殿も、研究が進み室町時代の移築であることがわかったらしい。戦乱のためか、地震のせいかわからないが、鎌倉には鎌倉時代の建物がないということはガッカリで、世界遺産に落選したのもその辺りが理由なのかもしれない。大仏は鎌倉時代のものらしいが、それを覆っていた建物は失われてしまい、露座になってしまったのは有名な話である。
104 円覚寺解説板
円覚寺の前を通って、12時43分、北鎌倉駅に到着した。
105 北鎌倉駅
GPSによる本日の歩行経路 (歩数:18072歩)
GPSによる今日の高度記録
今日は、古都の雪山というよくわからないコンセプトだったが、湿った重い雪だったのは海沿いの温暖な地なのでしかたがないところだ。リハビリを兼ねて普段見られない雪の鎌倉を堪能した一日だった。特に勝上献展望台からの展望は最高で、これをみることができただけでも満足である。
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