東京都一周
東京都の最高峰雲取山から東 秘境の都県境、長沢背稜へ
◆第6日目(2012年5月12日)
雲取山
〜
天祖山分岐
昨夜はあまり眠れなかった。息苦しさと頭痛で数時間で目が覚めてしまう。トイレも近い。練炭の一酸化炭素のせいかと思ったが、後から考えると軽い高山病のようだ。年をとると1500mでも高山病になるらしい。
浅い眠りのまま、4時に起床する。4時40分ころ朝日が登ってきたので写真を撮った。朝日は雲海から上ってくるが、その下はたぶん立川あたりの都会である。
なぜわかるかというと、昨夜夜景が見えたからである。
1 雲取山荘の日の出
2 昇る朝日
朝食を食べて、冷たい山の水で歯を磨いてから、5時40分に朝日に照らされて赤く輝く雲取山荘を出発した。
気温は8℃。テーブルには霜が降りていた。
3 朝日に照らされる雲取山荘 4 気温
昨日、同じバスで来て、七ツ石小屋で会った人は、ここでテント泊しているようだ。
5 テントサイト 6 廃屋越しに埼玉県側を望む
7 雲取ヒュッテ 8 大ダワ
雲取山荘との競争に負けて廃墟となった建物を過ぎて下って行くと、鞍部に出た。大ダワである。標高は1720mだ。雲取山からはもう300mも下ってしまったことになる。
9 大ダワ標識 10 大ダワから北へ
11 三峰神社分岐へ その1 12 三峰神社分岐へ その2
冬季の滑落事故多発の注意標識を過ぎると、三峰神社方面への分岐に着いた。ほとんどの人はそちらへ行くので、ここから長沢背稜へ続く道は、明らかに人が歩いていない感じ、不安な気持ちで急坂を登る。寝不足気味で、前日の疲れもあるのか、体調はいまいちである。後ろに二人組がいるが、多分三峰神社へ行くのだろう。
13 三峰神社方面分岐 14 芋ノ木ドッケへ その1
岩と木の根のわかりにくい険しい道である。
15 芋ノ木ドッケへ その2 16 芋ノ木ドッケへ その3
17 芋ノ木ドッケ その1 18 芋ノ木ドッケ その2
芋ノ木ドッケの標識があった。6時53分だ。この不思議な名前の山の標高は意外と高く、1946mもある。東京都では、雲取山の次に高い山であるが、誰も注目しない不遇の山である。頂上は平らで、苔が幻想的な雰囲気だ。二人組は予想に反してこちらに登ってきたが、休んでいる間にすぐ追い抜いていった。一杯水まで行くのだろうか。
19 芋ノ木ドッケ その3 20 芋ノ木ドッケ その4
21 白樺林? 22 倒木地帯 その1
芋ノ木ドッケからゆるやかに下ってくると苔から白樺、そして枯木の世界になる。
23 倒木地帯 その2 24 倒木地帯 その3
稜線の森がほとんど枯れた立木になっており、終末感を漂わせる不思議な光景が広がっている。人がいないこともあり、秘境感、寂寥感を感じながらシャッターを切った。
25 倒木地帯 その4
厳しい気候のせいか、それとも落雷か山火事でもあったのだろうか、かなり広い範囲の森林が一斉に枯れているのはあまりみない光景である。
26 倒木地帯 その5 27 長沢背稜から林越しに北を望む
28 長沢背稜から天祖山を望む 29 野生動物の糞
30 バイケイソウ 31 都県境標識
しばらく穏やかな稜線を歩くと、尾根が痩せて険しくなってきた。
32 柱谷の頭へ その1 33 柱谷の頭へ その2
都県境の石標も自立できないほどのヤセ尾根である。写真35のような左右が崖の難所を、岩を乗り越えながらおっかなびっくりで下っていく。さすがにここを冬に歩く気はしない。
34 柱谷の頭へ その3 35 柱谷の頭へ その4
写真36の標識の裏側にはマジックの手書きで柱谷の頭と書いてあった。
36 柱谷の頭 37 芋ノ木ドッケを振り返る
38 長沢山へ その1 39 芋ノ木ドッケ方面を振り返る
正面にピークが見えた。坂を登り切ると長沢山だ。標高1738m、時間は8時48分である。地味で特別な山ではないが、この長沢山が長沢背稜の語源となっていることは容易に想像できる。
40 長沢山へ その2 41 長沢山
42 長沢山から西を望む 43 水松山へ その1
ここで携帯電話が着信した。やっとauの電波が通じたらしい。しかし、一昨日ホテルで充電したはずの携帯の電池がもう少なくなっている。電波の届かない場所では、携帯は受信できる電波を探し続けるので電池を消耗すると書いてあったのを思い出した。電波の届かない山奥では、携帯の電源を切って置かなければいざというときに役立たないのである。
44 水松山へ その2 45
水松山へ その3
広くて傾斜も少ないおだやかな道が続く。やはり、ヤセ尾根よりもこういう道のほうが気楽で良い。今日はじめて一人の男性とすれ違った。大きな荷物である。話してみると、酉谷山避難小屋に一泊したそうだ。これから雲取山に行くのだろう。
46 水松山へ 47 水松山直下の森 その1
48 水松山への分岐 49 水松山へ続く尾根
ここまで、尾根の北側を歩いてきたが、ここで尾根を南側に越える。左には水松山に続くと思われる写真49の尾根があった。水松山とかいて「あららぎやま」と読ませるらしいが、私の国語力では無理である。
南斜面に写真50の分岐があった。長沢背稜、つまり都県境から天祖山への道が分かれている。小川谷林道は通行止めだ。時間は9時35分とまだ早い。
50 天祖山方面分岐 51 小川谷林道通行止めの標識
52 酉谷山方面への道 53 天祖山方面標識
さて、都県境からの下山ルートであるが、一番短いのは先ほどの大ダワから
大ダワ林道
を東京都側へ降りるルートであるが、これは次回、再び雲取山へ登るのと大差なく論外である。それに、現在通行止めらしい。次が、埼玉県側の
三峰神社へ降りるルート
であるが、これもあまり意味が無い。次に都県境を水松山近くまで来て、東京都側に降りる道が、この
天祖山経由
の道である。もう少し先に行くと、
タワ尾根
を降りるルートがあるが、これは迷いやすい難路らしく、疲れた体で下りにとるのはリスクがありそうだ。その先の
酉谷山
まで行って、東京都側、
小川谷林道
を降りるのが一番安全で、長沢背稜の距離も伸びそうなのだが、残念ながらこの道は標識のとおり通行止めである。これは痛い。酉谷山から埼玉県側のルートは難路で交通機関もない。その先の
ヨコスズ尾根
から東京都側に降りる道では、距離が長すぎて、ちょっとつらそうである。
というわけで、今回は、消去法で天祖山ルートを下る計画にしたのである。ここから、都県境である長沢背稜に別れを告げて右に曲がろう。
54 梯子坂ノクビレへ その1 55 梯子坂ノクビレへ その2
山奥にもかかわらず、斜面に工事現場のような場所が見えた。石灰岩の採石場らしい。
56 天祖山裏の石灰岩採取場 57 梯子坂ノクビレへ その3
58 古い梯子 59 梯子坂ノクビレへ その4
1700m近い長沢背稜から天祖山への道は下っている。登り返すのがきついので、あまり下ってほしくないと思いながら、鞍部に着いた。梯子坂ノクビレである。
60 梯子坂ノクビレの標識 61 梯子坂ノクビレ
通行禁止のお知らせを見ると、ここから下る道があったらしい。ただし、この看板が立てられたのは平成3年、つまりもう20年前である。登山地図に載っていないはずだ。この道が生きていれば、天祖山に登らずに済むので楽だったろう。
手元の高度計は1575mなので、1723mの天祖山まで150mの登りである。大したことはない。
62 梯子坂ノクビレの標高 63 ナギ谷ノ頭へ
天祖山の手前のピークであるナギ谷ノ頭に向かうが、急坂でしかも道が非常にわかりにくい。赤いテープを頼りに心細い道をたどる。
64 ナギ谷ノ頭 65 天祖山へ その1
わかりにくい急坂を喘ぎ喘ぎ登る。やはり寝不足の体には殊の外キツイ。
66 天祖山へ その2 67 天祖山直下
10時52分、標高1723mの天祖山山頂に到着した。もちろん誰もいないが、かなり立派な神社である。山頂からの展望はないが、隣に広場のようなところがあって、テントは張れそうな感じである。もう登りはないので後は下るだけだと少しホッとした。
68 天祖神社 69 会所
天祖山からの下りは、予想に反してキツかった。途中ですれ違った人に聞くと、少し危険なところはあるが、距離は短いとのこと。しかし、疲れた体には、写真70や71のような切り立った岩の尾根は精神的にもキツイ。
70 大日神社へ その1 71 大日神社へ その2
膝がやられそうなので、岩場でしまったストックを出して使うと少し楽になった。
72 大日神社へ その3 73 急坂での癒し
74 大日神社 75 自動雨量計
76 八丁橋へ その1 77 水場
どんどん高度を下げる急坂だ。疲れているので何度も休憩しながら下る。しかしなかなか高度計の数字が下がらない。天祖山から登山口まで1000m以上の標高差がある。
78 八丁橋へ その2
ここから急坂危険の標識が現れる。
79 見上げる青空
立ち止まって、心の準備も兼ねて休憩すると木々の合間から青空が見えた。
80 八丁橋へ その3 81 八丁橋へ その4
後で調べてみると、ここは滑落事故が多発しているようだ。数年前には1日に二人死んだらしい。トレランの人が走っていったが、落ちないかと心配になる。
82 八丁橋へ その5
切り立った崖に細く続く道をバランスを崩さないように注意しながら歩く。疲れて膝に来ている体には辛い。
83 八丁橋へ その6
特に林道に出る直前の部分はかなり恐ろしく、写真84のように恐怖のあまりピントがぼけている。
84 八丁橋へ その7 85 登山口
14時10分、やっと八丁橋近くの登山口に降りてきた。天祖山から3時間以上もかかってしまった。それにしてもこの道は難路である。が、谷筋が軒並み壊滅しており、下山道がここしかないのでしかたがない。天祖山は人気がないそうであるが、キツイ、危険、景色が綺麗でない(展望がない)の3Kなのは確かだ。これなら、むりしても長沢背稜をもう少し進もうという気になる。
まあ、なんだかんだ言いながらも、無事に林道まて降りてこられたので、新緑を楽しみながら林道を歩く。
86 八丁橋からみる日原川 87 石灰岩搬出設備
天祖山の裏側の採石場に通じる荷物用ロープウェイがあった。
通行止めになっている小川谷林道は、美しいが確かに険しい谷である。
88 小川谷
鴨沢以来の人里が見えてきた。井戸が山里の生活を物語る。
89 日原の集落 90 萬寿の水
91 萬寿の水解説板
15時15分、東日原のバス停に着くとバスが泊まっていた。15時台のバスはないはずだと思い尋ねると臨時のバスが出るらしい。トレランの大会があったようだ。
GPSによる今日の歩行経路
GPSによる今日の高度記録
(本日の歩数:32051歩)
今日は、疲労と寝不足と難路で予想外に時間がかかってしまったが、都県境の足跡を水松山近くまで延ばすことが出来た。長沢背稜は、人が少なく、立ち枯れ、苔、岩稜の危険なヤセ尾根など、なかなか渋いルートである。天祖山は、秘境と言っても良い場所であるが、なぜかもう一度行きたいという気にはならない。
次回は、再び難路のアプローチから長沢背稜にとりつくことになるだろう。都県境で最も困難なルートと言えそうである。計画をしっかり立てる必要がありそうだ。
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