山手線一周(前編)

        山手線に沿って徒歩で一周してみる  そこにある東京の本当の姿
◆ 2014年3月8日

 自然の中を歩くのはもちろん良いが、都会を放浪するのもなかなか楽しいものである。都会の放浪フィールドとしては、横浜〜川崎の海岸線江戸城内堀神田川隅田川などいくつか探訪してきたが、今日は、山手線に注目してみよう。山手線を徒歩で一周する行為は、結構よく知られているらしく、検索するとたくさん出てくる。一周は約40km、これを10−12時間くらいかけて周るらしい。レポートを見るとどれも一日で一周することに価値を見出しているらしく、各駅の写真を証拠として載せているだけのものが多い。後半は疲れてきて、歩くのがやっと、暗くなってきて、街の景色もよくわからずただ歩き続けるという例が多いようだ。

 このレポートでは、まったく切り口を変えて、一周する行為だけでなく、「そこになにがあるのか」を見ること、記録することをミッションとしよう。東京という街の、真実の姿を探る。「果たしてわれわれが持っている東京のイメージは正しいのだろうか。」というサブタイトルとともに、こじつけっぽい企画を立てた私は、さっそく行動に移すことにする。

 まず、ミッションを遂行するため、最初から一日での一周は捨てた。まあ、体力的、年齢的にも無理なんであるが。起点はやはり皇居を正面に望む東京駅丸の内口ははずせないとして、第一日目の目的地は、新宿駅だろう。山手線を南北に分ける中央線は、東京駅と新宿駅を結んでいることからも、妥当だと思う。この距離ならば、写真を撮ったり多少の寄り道も許されそうである。方向は、トラック競技や皇居のランニングでもわかるように、人間本来の性質である反時計回り、つまり山手線内回りと同じ方向になる。

 山手線の大規模ターミナル駅は、東京、上野、池袋、新宿、渋谷、品川の6つであるが、今日はそのうち渋谷、品川を除く4つを訪れることになりそうだ。降りたことのない駅もたくさんある。まだ、東京都心にも未踏の場所があることにワクワクしてくる。
 山手線がとこを走っているか、どんな駅があるかは、首都圏に住んでいる人なら大体わかっているだろう。おなじみの図である。

    
                              JR東日本ウェブサイトより

 それにしても、利用したことはなくても、誰もが名前は知っているというスター級の駅ばかり、さすがに日本一都会な路線である。この環を両方向に3分間隔で長大編成の電車が一日中グルグル回っているのだから、凄いもんである。山手線の時刻表をみる人、スマホで発車時刻を調べる人はいないだろう。駅での発車時刻の電光掲示板でさえ気にする人は少ないかもしれない。
 電車での一周は1時間ということなので、常時40編成の電車が走っていることになる。もちろん通勤時の混雑も半端でなく、JR東日本のドル箱路線だ。そしてなにより地下鉄よりもわかりやすいのがいい。

 1 幾何学模様


 そのオープニングは、万華鏡のような幾何学模様の写真で幕を開けた。これがどこだか分かる人は相当の駅マニアである。



 東京駅の丸の内南口に降りると、高いドームがある。その天井の明かり取りの装飾がこの模様である。改修が終わった日本一格式の高い駅の顔だ。工事を担当した建設会社のサイトが詳しく解説している。

  2 東京ステーションホテル その1          3 東京ステーションホテル その2
   

 皇居を望むここから、山手線一周の旅が始まった。

  4 東京駅から丸の内のビル街を望む          5 東京駅丸の内中央口 9:19
   

 6 東京駅


 丸の内中央口に行くと、駅の写真を撮っている人がたくさんいた。駅舎の風格と歴史から言っても日本一の駅であることは間違いない。
 写真7でレンガ駅舎に別れを告げると、線路沿いガード下は飲食店街になっている。ガード下というと、庶民的な、悪く言えば汚い店がありがちだが、さすがにエリートばかりが勤める丸の内、ガード下でもキレイな店ばかりである。

  7 東京駅から神田方面へ               8 丸の内味の散歩路 その1
   

  9 丸の内味の散歩路 その2             10 大手町駅
   

 地下鉄の大手町駅入口をすぎる。大手町駅は東京駅と地下で繋がっており、実質的にはおなじ駅である。5路線の地下鉄が乗り入れる日本一の地下鉄駅なんだそうである。



 線路沿いの道の頭上には、高架線が通っているが、これは中央線である。1995年に長野新幹線のホームを確保するために東京駅の大改造が行われたが、その時に新幹線に押し出されるように丸の内側に新設されたのがこの中央線である。駅構内はともかく、線路用地はもう無かったのだろう。このように完全に道路上にはみ出して建設されている。

  11 中央線高架                   12 ガード
   

 古そうな鉄骨やレンガで出来たガードを潜って東側に移る。こちらも写真13のように無理やり道路の上に線路が造られたようだ。かなり幅があるがこれは東北・上越・長野新幹線の線路だろう。
 新幹線のガード下には屋台が並んでおり、こちらは丸の内とは違って庶民的な感じである。1万円札が使えないということは、後輩と二人で飲んでも先輩は1万円以上支払うことは絶対にないわけである。メニューをよく見るとラーメンしかないので、そんなにたくさん食べられるわけがないか。

  13 東北上越新幹線                 14 屋台
   

 新常盤橋で日本橋川を渡る。江戸城外堀である。ここで、GPSのスイッチを入れ忘れていたことに気がついた。川があって広々した場所なので衛星を補足するには都合の良い場所だった。

  15 新常盤橋                    16 東北縦貫線高架
   

 さて、このあたりの高架下はずっと工事中である。隙間から覗くと、新しいコンクリート高架の横に「東北縦貫R5ゲート」と書いてある看板がはっきりみえた。ご存知のように、現在、西の在来線ターミナル東京駅と北の在来線ターミナル上野駅の間には、山手線と京浜東北線しか通じていない。現在分断されている東海道線と東北線をつなげて直通運転をしようという訳である。宇都宮発熱海行きなんていう、餃子を食べたあとに海の見える温泉に入るというような旅が簡単にできるようになる夢の計画である。神奈川県南部から東北、上越、常磐方面に行くにはとても便利になるが、JRは餃子を食べるお客さんのためだけにこんな困難な大工事をしているわけではないらしい。
 東京駅発着の電車をなくして不要になる品川・田町の広大な車両センターを再開発して大儲けしようという計画があるらしい。リニアの始発駅が品川になったことや羽田への乗り入れも含めて、今後東京南部が大きく変わりそうである。そして、その端緒となる東北縦貫線も来年3月に開通することが決まったようだ。



 東京丸の内と比べてグッと庶民的なガード下になってきた。やがて、佳境を迎えた縦貫線工事のパネルで覆われた神田駅南口に到着である。新宿に向かう中央線はここでお別れである。

  17 雑然とした高架下                18 神田駅南口 9:42
   

  19 神田駅前                    20 イギリス風パブ
   

 結構本格的なパブがあった。

  21 神田駅東口 9:44                22 多国籍な飲食店
   



  23 ガード下の鍛冶町郵便局             24 ド派手な飲食店
   

 神田駅周辺は面白い飲食店が多いようだ。フードネタの好きな人は食べ歩くのも面白そうである。

  25 神田一のカレー屋                26 面白いキャッチコピー
   



 古そうな鉄骨のガードを挟んで、対照的な警察官とホームレスが全くお互いに関係なく、独自の世界に存在している。仕事柄物理的な接触はあるかもしれないが、個人的に心を通じ合わせることは決してないだろう。

  27 白バイ隊員とホームレス              28 東北縦貫線高架
   

 東北縦貫線らしき高架はもうほとんど完成している。写真29で神田川に突き当たり道は途切れてしまった。

  29 神田川に突き当たる               30 神田川を渡る
   

 ...かにみえたが、神田川をさかのぼった時に歩いた、暗い歩道に見覚えがあった。さっそく渡る。

  31 神田川下流を望む                32 橋上
   



 神田川を渡るとすぐに秋葉原駅である。つい先日、ここからつくばエクスプレスに乗ったことを思い出した。

  33 つくばエクスプレス秋葉原駅           34 秋葉原駅中央改札口 9:55
   

 中央改札口を通り抜けて、駅の北東側に出る。再開発されてキレイになっていた。駅前にガラス張りのきれいな建物があったので近づいてみると、オアシスという有料トイレ兼喫煙所兼貸しスペースらしい。せっかくなので、トイレに入ってみた。

  35 秋葉原駅前                   36 オアシス
   

 さすがに駅前のハイテクトイレであり、Suicaの精算機がトイレの前にあった。ポケットを探って財布からコインを出すというイケてない行動は必要ないのである。さすがだ。料金は100円である。中には、ホテルフロントマンのような男性と女性がいて、トイレに入ると言ったらちょっとお待ちくださいと言われた。掃除後チェックをしているらしい。たかが、トイレを使うだけでホテルやレストランのような扱いを受けたのは初めてである。

  37 トイレのSuica精算機               38 有料トイレ内部
   

 内部は写真38のとおりだが、とにかく考えられる全ての設備がついている。車で言えば、最高級の革張りシート、オーディオ、カーナビなどのオプションが全部ついている最上級グレードという感じである。1時間位籠っていても快適かもしれない。出るときに心配になったのは、ドアの外に係の人が立っていて、ありがとうございました、とお辞儀をされるのではないか、ということである。それでは落ち着いてゆっくりと用を足せないではないか。
 トイレに入ったおかげで電波が受信できなかったGPSの軌跡が乱れている。



 オアシスを出て、線路とビルとの間に進む。エスカレーターがあったが、休日なので動いていなかった。大手ソフトウェア会社のビルらしい。

  39 秋葉原駅前から北を望む             40 富士ソフトビルの横
   

 広い大通りに出て北へ進む。写真42では、3人のホームレスがミーティングをしていた。

  41 御徒町駅へ その1               42
   



  43 御徒町駅へ その2               44 2k540入口
   

 御徒町駅へ向かって歩いていると、ガード下に奇妙な表示があった。なんだろうと入ってみると、そこは外側からは想像もできない幻想的な世界が広がっていた。アクロポリスのような白くて丸い支柱が並び、両側にはこれも外観が白に統一された個性的な店舗というか工房というか、そんな店が並んでいた。
 2k540 AKI-OKA ARTISANというプロジェクトらしい。

  45 2k540内部 その1               46 2k540内部 その2
   



 無国籍な幻想の世界から再び太陽の光がさす世界に出ると、ジョナサンがあった。ガード下のジョナサンは初めて見た。

  47 ガード下のジョナサン              48 宝石店
   

 やがて人通りが多くなる。御徒町駅が近づいているのだが、写真48のように、宝石屋がたくさん並んでいる。しかも、銀座などの賑やかな街にあるおシャレできらびやかなジュエリーブランドショップではなく、いかにも宝石屋という感じのちょっと怪しげな雰囲気である。でも、きれいな店よりも値段はオトクそうだ。ただし、彼女と一緒に選ぶ場合、きれいな店ではなく、こういう問屋っぽい店の指輪やアクセサリーで満足してくれるかどうかは、全く保証できない。サイズを確認しておいて一人で買いに来て、きれいなレストランか何かでプレゼントすれば、わからないだろうし、レストランの食事代くらいは浮くかもしれない。どこで買ったか、という話題はごまかすとして。
 ただ、女性にとっては、ジュエリーそのものの価値よりも、それをどこで買ったか、つまり、ティファニーの包装そのものに価値を見出している場合が多いので、この作戦は要注意である。

  49 靴磨き                     50 御徒町駅 10:20
   

 戦後のような靴磨きの光景のある、御徒町駅に着く。



 御徒町駅から北は、山手線の東側を歩いているが、にぎやかな通りである。しかし、御徒町といえばやはりアメ横だろう。

  51 御徒町駅駅前                  52 アメ横 その1
   

 ガード下の雑然とした店の小路を通って西側に抜ける。そこはまさにアメ横であった。人通りがすごく、外国語が飛び交っている。完全に外国人の観光コースなのである。昔、何度か買出しに来たことがあるが、最近はご無沙汰だ。

  53 アメ横 その2                 54 アメ横 その3
   

 再び線路の東側に戻ると、アメ横の延長のような専門店が並んでいる。写真55はオタクっぽいDVDの店である。このネット、ケーブルテレビの時代にDVDということは、相当マニアック...いや、専門的なコンテンツなのだろう。

  55 上野駅へ                    56 アダルトショップ
   

 その向かいには、写真56のような専門店が何のてらいもなく営業していた。普通は、このような専門店は、路地裏でこっそりと夜だけ営業しているものだが、さすがに御徒町である。



 上野駅に着いた。東側のデッキを歩く。

  57 上野駅広小路口 10:29              58 上野駅デッキ
   

  59 上野駅                     60 上野駅東上野口 10:33
   

 上野駅も近代化したが、それでも北国の玄関口としての哀愁と懐かしさをまだ持っているような駅舎の佇まいである。デッキを階段で降りると、上野駅前というには、ずいぶんと小さなバス停があった。そういえば上野駅前にはバスターミナルというものがないのだろうか。

  61 デッキから地上へ                62 上野駅前バス停
   

  63 案内板
 

  64 上野駅入谷口 10:37               65 陸橋へ上がるスロープ
   

 百貨店の商品搬入口のようなビルの一角に上野駅入谷口があった。複雑な駅である。その先には、これまた荷物エレベータのようなスロープがあったので、登ってみる。



 ジグザグの通路を上がると、陸橋に出た。そこにはカメラマンがたくさんいて、警備員まで出ていた。イベント列車か何かだろうか。
 上から上野駅を見下ろす。海岸線の旅で上野駅から何度も常磐線の特急に乗ったことを懐かしく思い出した。

  66 陸橋上の人混み                 67 陸橋から上野駅ホームを望む
   

 陸橋を下って線路沿いを歩く。

  68 鶯谷駅へ その1                69 鶯谷駅へ その2
   

  70 上野郵便局                   71 鶯谷駅へ その3
   



  72 鶯谷駅へ その4                73 鶯谷駅南側の陸橋下
   



 陸橋の下を通り抜けるとそこはいきなりの下町の路地になった。駅前のはずだが、道は狭く、昭和の時代に戻ったようである。

  74 鶯谷駅付近の路地 その1            75 鶯谷駅付近の路地 その2
   

 その先には、小さな公園があった。しかし、異様な雰囲気の公園である。目の前にはラブホテルの派手な壁と入口、公園のフェンスには防犯の看板が立ち並び、猥雑さと治安の悪さが肌で感じられる。
 公園のベンチに座るホームレスの横には野良猫がいて、高級そうなスーツを着たおばさんが餌をやっている。今日は休日であり、近くにオフィスもないのになぜブランドのスーツ姿なのか。おばさんは、年齢は50近いかもしれないが、美人で化粧映えしていて、ただ者ではないという感じである。ここでの仕事を終えたのか、それともこれから仕事なのか。

  76 犯罪防止を呼びかける看板           77 鶯谷公園
   

 スーツ姿のおばさんが去ると、公園の前にあるラブホテルの前に一台の車が停まった。中から、さっきのおばさんよりももっと派手な服を着た30代と思われる女性が降りてきた。化粧は完全に夜のもので、顔立ちは派手、整形かなと思うような美人である。その人はヒールの音を響かせて一人でホテルの中に入っていった。時間は11時ちょうど。仕事場に直接出勤である。車の運転をしていたのは、テレビで見るそのまんまのチンピラ風の若い男である。ヒモか単なる組織の末端の送迎係か、それとも両方を兼ねているのかわからないが、その車は路地を音もなくすぐに走り去った。車の音がしなかったのは、その車種がベンツでも黒い窓のワンボックスでもなく、プリウスだったからである。この古典的な商売にまでプリウスが使われているとは、エコが日本の隅々にまで浸透しているということで、笑ってしまった。まあ、燃費が良いことはだれでも歓迎だろうし、何より静かだというのは、ホテル街で目立たないように送迎するのには好都合なのかもしれない。

  78 鶯谷ホテル街 その1              79 鶯谷ホテル街 その2
   

 迷路のように入り組んだホテル街を歩く。ホテルからはカップルが出てくる時間である。しかし、写真はまずいので、カメラを隠すようにしながらビクビク歩いていると、正面のホテルの前に、怖いお兄さんが立っていた。風俗店ではないので呼び込みではなさそうだが、目を合わさないようにする。とにかく、このヤバイ空間を早く脱出しなければならない。

  80 鶯谷ホテル街 その3              81 鶯谷駅前飲食店街
   

 ようやく線路沿いの少し明るい道に出て、さらに歩くとやっとラブホテルが途切れて、飲食店街になった。



 その先が鶯谷駅である。駅前にいる人たちもどこか普通では無いようにみえたのはさっきの異次元空間体験のせいだろうか。

  82 鶯谷駅北口 11:03                83 輸入代行店
   

 駅前には、輸入代行店があった。何を輸入しているかと見ると、バイアグラ系の怪しげな非合法医薬品である。脱法ドラッグ系も売っていそうな怪しさだ。そのとなりは、写真84のよくわからない店舗である。なんの情報館だろうか。実は写真には写っていないが、奥には若い女の子が列を作って並んでいた。仕事を紹介してくれるのだろうか。よくわからないシステムだが、なんとなくヤバそうなことだけは私にもわかる。それにしても、鶯谷駅前はスリルと怪しさ満点のところであった。

  84 地域情報館                   85 古い旅館
   

 ホテルとの競争に負けたのだろうか、古い旅館をすぎると狭い路地の住宅街になり、公園に突き当たった。子供と老人がいる。老人が私とカメラをみて、「SLを撮りに来たのかい」と聞く。ここで、先ほどの上野駅の陸橋の人だかりの訳がやっとわかった。誤解を解いて、山手線を歩いて一周しているというとびっくりして、となりにいたおばあさんと一緒になって次の日暮里駅への道のりを親切に教えてくれた。お礼を言ってその場を離れる。

  86 日暮里駅へ向かう路地              87 日暮里駅へ その1
   



  88 団子屋
     

 老舗の団子屋があった。下町である。

   89 団子屋由来
  

  90 日暮里駅へ その2               91 日暮里駅南口 11:17
   

 日暮里駅南口に着いた。



 さて、ここまで山手線の外側を歩いてきたが、上野駅から日暮里駅までの山手線の内側には何があるかといえば、下の地図を見るとわかるようにお寺と学校などの文化施設ばかりである。一方、山手線の外側の低地は、江戸時代から、庶民の住む下町だったに違いない。例えば鶯谷駅を挟んで山手線の内側は、寛永寺、国立博物館、東京芸大と日本を代表する歴史と文化の街であるが、線路を挟んで反対側は、朝からヤバイ筋の人がうろつく日本有数のラブホテル街で、駅前には怪しげな薬を売る店があるという、この落差は凄い。人間という動物の二面性、オモテとウラをみるようで、面白いものである。これには、地形的な意味もあると思うが、それについては後述したい。



  92 日暮里駅前                   93 荒川消防署音無川出張所
   

 日暮里駅前は高層マンションが立ち並び、下町のイメージは残っていない。駅に消防署があったり、隣合わせでドトールとエクセルシオールがガチで勝負していたりと、なかなか熱い駅である。

  94 日暮里駅前コーヒー戦争             95 日暮里駅東口 11:20
   

 JR東日本ウェブサイトより

 日暮里駅は、東京から6番目の駅になる。ここで常磐線が右に分かれて、ここから先は山手線と京浜東北線だけになる。次のターミナル駅の池袋まで、あと6駅だ。

  96 日暮里駅前高層ビル               97 金杉踏切
   

 踏切があった。まさか、山手線の踏切か?と思ったら、常磐線だった。



  98 消防の出動 その1               99 消防指令車
   

 なにやら消防署が出ていて、がさがさしている道を抜けると、すぐに西日暮里駅である。歩いて10分もかかっていない近さである。

  100 西日暮里駅へ                 101 西日暮里駅 11:29
   

 西日暮里駅前もガード下に飲食店が並ぶごちゃっとした雰囲気だが、どこか明るい感じがする。ここから山手線の外側、つまり東側は、東北・上越新幹線、東北本線、車両基地である田端運転所があるため歩きにくいので、内側に移動することにする。道灌山通りのガードをくぐって、写真103の線路沿いの道に入る。

  102 西日暮里駅 11:31               103 田端駅へ その1
   

 この道は坂道になって、やがて山手線のレベルを越えて高台に登っていた。

  104 田端駅へ その2               105 田端駅へ その3
   



 坂道は続き、写真106のように完全に山手線を見下ろすかたちになる。この坂道を登り切ると公園があり、たくさんの高校生が遊んでいるようにみえた。まあ、色々な活動をしているらしいのだが、ずいぶん自由な学校だなと思った。後でわかったのだが、ここには、あの開成中学・高校があるので、おそらくそこの生徒だろう。将来の日本を背負う若者なのである。

  106 田端の高台から山手線を見下ろす        107 田端台公園
   
      この図は、国土地理院ホームページ掲載のデジタル標高地形図画像データ(東京都区部)を使用した。


 さて、この坂道について地形的に見てみよう。上の図を見ると、青梅から始まる武蔵野台地の東の末端縁が上野駅から田端駅までの山手線と重なっていることがわかる。正確に言うと、台地末端の崖下の低地を山手線が通っているのである。山の手と下町の境界といっても良いのかもしれない。

 武蔵野台地末端も、川によって侵食を受けて谷が発達している。上の図の駒込駅と田端駅の間を通って不忍池に通じる蛇行した谷は、室町時代までここを流れていた石神井川の旧河川流路である。その東にある侵食から取り残された台地が今歩いている高台である。ここは、上野台地とも呼ばれており、その最北端が飛鳥山で、その北の音無渓谷で、石神井川が上野台地を分断して、隅田川に流れ込むようになったのは、江戸時代以降だといわれている。
 この上野台地が最も細くなっているのが西日暮里駅付近であるが、この狭い台地の上に建っているのが、開成中学・高校である。

  108 田端駅南口へ                 109 田端駅を見下ろす
   

 現在、上野台地の上にいるが、山手線は、台地の下にあるので、駅に行くには、当然坂道を下る必要がある。その入口が、写真108である。田端駅南口はその崖の中腹にあり、駅の跨線橋からそのまま上がってくる構造になっているようだが、この南口は、およそ山手線の駅とは思えないほどの田舎ぶりである。これほど素朴な駅が山手線に残っているのがなんだか嬉しい。

  110 田端駅南口 11:47               111 不動坂
   

 田端駅南口から不動坂を登って、再び上野台地上に上がる。



 駅前とは思えない写真112の風景である。そのまま崖上の路地をすすむと、階段があり、ビルの中のようなところに通じていて、いつのまにか下に降りていた。その階段を下から見上げたのが写真113である。この階段が上に抜けられるというのは地元の人しか知らないだろう。

  112 不動坂上                   113 田端駅南口と北口を結ぶ階段
   

 上野台地の下の段にあるこちらの北口は、南口とは対照的に賑やかで、駅も近代的だ。

  114 田端駅北改札口 11:54             115 台地上から田端駅北口方面を望む
   

 駅前の都道458号線は、上野台地を切通しており、再び階段を登って都道の上に出る。



 ここからしばらくは、線路沿いの道がないので、高台の道を北西に進もう。

  116 不思議な教室                 117  サトウハチロー旧居跡地
   

  118 サトウハチロー旧居跡地解説板
   サトウハチロー

  119 周辺案内板
 

 120 田端周辺に住んでいた文士
   

 このあたりは文化人が住む街だったらしい。昔から文化人やお金持ちは高台に住むものと相場が決まっている。古い通りらしく、商店も古風な面影がある。

  121 古い豆腐屋                  122 田端の山手線陸橋
   

 地図によると、この道は、山手線と交差するはずだが、それが写真122の場所である。



 山手線は、田端駅で東北線や京浜東北線と別れて、左にカーブするが、この時に上野台地を横切らなければならないので、このように切り通しで西に向かっている。

  123 陸橋から山手線上野方面を望む         124 陸橋から山手線池袋方面を望む
   

 ここで、旧貨物線、現在の湘南新宿ラインが王子・赤羽方面へクロスするため、山手線の下を交差する。その先にあるのが、山手線唯一の踏切である、第二中里踏切である。

  125 山手線と湘南新宿ライン分岐          126 第二中里踏切
   

 踏切の手前には、湘南新宿ラインの上に中里橋がかかっているが、その先の山手線と平面交差になっている。ちなみに第一中里踏切は廃止されたそうである。山手線と湘南新宿ラインに高低差があるため、立体交差が難しいようだ。

  127 第二中里踏切から上野方面を望む        128 第二中里踏切から池袋方面を望む
   



 再び、山手線の内側を歩きはじめるが、道はだんだんと下って、やがて写真129のように山手線よりも低くなって、駒込駅東口に到着する。地面が低いので、ここでは駅の入口が線路の下になっている。

  129 駒込駅へ                   130 駒込駅 12:17
   

 駅前はゴチャゴチャしているが賑やかだ。

  131 駒込駅東口 12:18              132 駒込駅前さつき通り
   

 右手に駒込駅のホームを見ながら歩いて行くが、ここで上り坂になり、再び線路よりも高い位置になる。

  133 駒込駅南側                  134 旅館
   



  135 駒込駅南口 12:22             136 駒込駅北口 12:24
   

 駅の西端についた。ここは、南北の出口があるが、線路よりも高い位置にある。東口は線路よりも下に改札があったということは、つまり、駒込駅は、坂に造られたことになる。



 先ほどの図を見ていただければ、理由は明らかだ。第2中里踏切を過ぎた山手線は、中里1丁目、2丁目付近の旧石神井川が削った谷を走ったあと、駒込駅付近で今度は本郷台地に差し掛かったわけである。この坂が本郷台地の北東側の崖ということになる。

  137 巣鴨駅へ その1               138 巣鴨駅へ その2
   



 山手線は本郷台地を切り通しで西へ巣鴨駅へ向かう。

  139 巣鴨駅南口駅前ロータリー           140 巣鴨駅南口 12:36
   

  141 巣鴨駅改札前                 142 とげぬき地蔵方面
   

 巣鴨駅は、年寄りの聖地と言われているが、歩いている人は老人だけでなく、普通に賑わっていた。ここで、仕事の関係の知り合いに会った。ふたりとも、東京とは関係ないところに住んでいるのに、偶然とは凄いものである。
 ここから、山手線の外側に移る。

  143 巣鴨駅正面口 12:37              144 すがも桜並木通り
   



  145 江戸橋から池袋方面を望む           146 子安天満宮
   

 桜はまだであるが、梅は満開だ。子安天満宮とゴルフ練習場を過ぎると下り坂になる。巣鴨警察署の西側で山手線のガード下を通って、山手線の内側に入る。つまり谷に入ったわけである。これは、下の地図では大塚駅の東側にある緑の低地で、谷端川の流域である。しかし、この川は現在暗渠になってしまい、その流れを見ることはできない。小石川・後楽園を通って水道橋で神田川に注いでいる。
 コンクリートで固められた東京で雨が降れば、当然この細長い谷に水が流れ込んで洪水になるわけで、それを防ぐために石神井川方面への放流路ができているそうだ。



  147 大塚駅へ その1               148 大塚駅東側
   



 マックの看板があった。株主優待券を持っていたので、ここで昼食タイムである。食べ終わると、再び山手線外側に出て都電荒川線を横切る。

  149 昼食                     150 都電荒川線大塚駅前
   

 都電のとなりが大塚駅北口である。

  151 大塚駅北口 13:28               152 池袋駅へ その1
   

 大塚駅を過ぎると、写真152のように再び坂道となる。谷端川の谷から再び武蔵野台地の末端、池袋のある台地に登るわけである。この谷端川と神田川に挟まれた台地は、豊島台とか池袋台地と呼ばれているようだ。



 周囲の土地が高い豊島台では、当然山手線は切り通しになる。切り通しは橋をかければそのまま立体交差になるので、踏切を少なくするのには良いのかもしれない。

  153 空蝉橋から池袋方面を望む           154 池袋駅へ その2
   

  155 池袋駅へ その3               156 栄橋から池袋方面を望む
   



 山手線の内側の線路沿いの路地をずっと歩いて行くと、写真158の先で行き止まりになってしまったので、迂回する。

  157 池袋駅へ その4               158 池袋駅へ その5
   

 この辺は、道が入り組んでおり、写真159、160のような路地を抜けていく。火事になったら消防車が入れないので大変だろう。

  159 池袋駅へ その6               160 池袋駅へ その7
   

 西巣鴨橋、堀の内橋と進んでいく。堀の内橋には、山手線の電車らしきレリーフがあった。

  161 西巣鴨橋から池袋方面を望む          162 堀の内橋レリーフ
   



  163 堀の内橋から池袋方面を望む 
     

  164 堀の内橋の由来解説板
 

 堀の内橋からみる池袋方面は、高い建物が目立ち始めて大都会の威容を感じさせる。首都高5号線の下を横切る。

  165 池袋駅へ その8               166 豊島区立健康プラザとしま
   

 高い建物は煙突で、豊島区の清掃工場であった。

  167 豊島清掃工場                 168 池袋駅へ その9
   

 清掃工場から続く池袋人道橋で、山手線の内側に入る。駅前の公園では、ドラマのように女子高生がタムロしている。

  169 池袋人道橋を渡り東口へ             170 池袋駅前公園 その1
   



  171 池袋水天宮
     

 172 池袋水天宮解説板


 池袋駅前公園に残っている古いものは神社だけである。

  173 池袋駅前公園 その2             174 四面塔尊
   

  175 パルコ                    176 WE ROAD
   

 人通りが多くなり、パルコの看板が見えた。池袋駅である。



  177 池袋駅前 その1               178 池袋駅東口 その1  14:04
   

 一気に人が多くなる。

  179 池袋駅前 その2               180 ストリートミュージシャン
   

  181 池袋駅東口 その2              182 駅前を右折
   



 右折して西武南口を過ぎると地下道がある。地図を見ると、山手線と西武池袋線の間に細長い土地がある。最初は鉄道用地かと思ったが、そうでもないらしい。この大都会の線路の間にポッカリと残された真空地帯のような土地をぜひ見てみたいと思っていた。

  183 池袋駅西武南口                 184 西武池袋線地下道
   

 地下道をでると、そこは異次元の世界であった。

  185 西武池袋線と山手線に挟まれた地区 その1   186 同地区 その2
   

 写真185から187がその真空ポケットである。池袋のすぐとなりにあるにも関わらず、商業施設は一切ない。西武鉄道の変電所や工場が並び、人もほとんど歩いていない、工業地帯のような殺風景なところである。普段、池袋駅付近で買い物をしたり、遊んでいる人たちもこんなところがあることを知らない人がほとんどだろう。



 唯一すれ違ったのは、シャドーボクシングのように腕を振り回しながら歩いている、若い男性だけである。顔も恐ろしく、目が血走っていて、ただ者ではない。場所が場所なだけに、襲われたらアウトだと思い身構えたが、勝てる相手ではなさそうだ。
 地下道で西武線の南側にでると、陸橋があるので、山手線の外側に渡る。

  187 同地区 その3                188 花のはし(陸橋)を渡る
   

 花のはしというその陸橋からみえたのは、線路沿いにあるヨネクラボクシングジムの建物だった。さっきの男性は、本物のボクサーだったのだ。不審者とまちがえてしまい、申し訳なかったと心の中で謝っておく。

  189 ヨネクラボクシングジム            190 花のはしから新宿方面を望む
   

 異界から復帰して普通の線路沿いの景色に戻った。

  191 靴屋さん                   192 目白駅 14:27
   

 目白駅に着いた。池袋からたった一駅なのに、雰囲気がガラッと変わり、別世界のようである。そういえば、駅舎にも上品さが漂っている。



 池袋の若く、チープな雰囲気に比べて、この目白駅の上品さはどうだろう。駅前にいる女性グループも、ちゃんとしたフォーマルな服装にバイオリンでも持っていそうな上品な奥様ばかりである。もちろん、都内有数の高級住宅地があることと無関係ではないが、やはり、駅の東側にある広大な敷地の学習院大学に負うところも大きい。なんといっても皇室御用達の日本で一番上品な大学である。目白駅は、これまで廻ってきた山手線の駅の中で最もハイグレードなんである。

  193 学習院大学                  194 高田馬場駅へ その1
   

 山手線と学習院大学の間の道を南へ向かう。ここはゆるやかな下り坂で、高級ブティックと低層の億ションが並んでいる静かな通りだ。そして、下り坂が終わると、写真196に突き当たり線路沿いの道は途切れる。右手に山手線の高架が見えるので、台地の部分が終わって低地に降りてきたことがわかる。

  195 切手の博物館                 196 高田馬場駅へ その2
   



 再び、地形図を見ると、目白駅の南で池袋台地(豊島台)が終わって、神田川が開削した低地に降りてきたことがわかる。その斜面に建っているのが、写真197の高級マンションである。最初に見た時は、学習院大学の学生寮か、さすがに普通の学生とは違うなと思って、後で調べたら、マンションであった。すなわち、この建物は、池袋台地の南端縁の斜面に建っていることになる。
 マンションのサイトを見ると、売り文句は、2006年グッドデザイン賞受賞・隣接する学習院の自然林と一体となる「目白の杜」を創造・大使館なみのセキュリティシステム・コンシェルジュスタッフによるホテルのようなホスピタリティ、とある。大使館を引き合いに出すとは、さすがに東京である。東京の先進国の大使館はのきなみ高級な場所にあるのだ。そして、大使館並みのセキュリティということは、自分の家に入るのにはパスポートかビザが要るということであり、チョットメンドクサそうである。しかし、中は治外法権なので、悪いことをしても日本の警察は手出しできないということであり、これは凄い。
 ちなみにお値段の方も「お高いんでしょ」とは想像するが、検索してみると、例えばこの部屋は中古の3LDKにも関わらず、1億3千500万円である。ITか不動産で成功するか、医者か弁護士になってなおかつ悪どく稼がないと買えそうにない。

  197 目白ガーデンヒルズ              198 高田馬場駅へ その3
   

 さて、億ションの建つ別世界から下界に降りると、声優学校があったりして、ちょっと違う世界になり、やがてこの低地を作った神田川を渡る。

  199 声優養成学校                 200 神田川
   



 神田川を過ぎると、早稲田通りを渡り、早稲田大学行きのバスが停まっている高田馬場駅である。

  201 高田馬場駅へ その4             202 高田馬場駅前
   

  203 西武高田馬場駅                 204 高田馬場駅 14:44
   



  205 新大久保駅へ その1             206 新大久保駅へ その2
   

 高田馬場駅を過ぎると、写真205,206のように上り坂になる。下図のとおり、神田川の低地から新宿駅のある淀橋台地に上がるのである。



  207 新大久保駅へ その3             208 区立大久保スポーツプラザ
   



 新大久保駅への線路沿いの道は広々して気持ちが良い。

  209 新大久保駅へ その4             10 百人町自転車保管場所
   

 自転車保管所をすぎると、古い建物が現れて、雰囲気が変わってきた。新大久保駅が近い。

  211 古い建物                   212 大久保通り新大久保駅前
   

 大久保通りには、韓流ショップが立ち並び、別世界になったようだ。表の賑やかさと裏腹に、夜は外国人売春婦が立つ街、最近は外国人排斥デモの街としても有名になったこの街の中心に駅はある。たった2駅北にある目白駅とは正反対でえらい違いである。

  213 韓流ショップ                 214 新大久保駅 15:05
   



  215 新宿駅へ その1               216 荒れた街
   

 新宿駅に向かう道が、写真215であるが、昼間でもどこか危険な雰囲気が漂っている。道端に捨てられたままのゴミは、日本ではあまり見られなくなった光景である。およそ学校には見えない、日本語学校があった。外国人の不法滞在に利用されているというウワサを聞くので心配なところである。

  217 日本語学校                  218 ハローワーク新宿
   

 職安を過ぎると、西武新宿駅である。西武新宿線は、新宿から田無、所沢を通って川越に行く路線であるが、西武新宿駅は新宿駅よりも北にあり、JR新宿駅と新大久保駅の中間にある。そのため、山手線との乗り換えは、高田馬場駅になる。

  219 西武新宿駅
     

  220 案内板


 この西武新宿駅の東側に広がるのが、日本一の歓楽街、ありとあらゆる欲望渦巻く歌舞伎町である。一台のパトカーが、歌舞伎町から出てきた。毎日、水面下で警察と外国人と暴力団のせめぎ合いが行われているのだろう。

  221 歌舞伎町 その1               222 新宿駅へ その2
   



  223 歌舞伎町 その2               224 新宿駅へ その3
   

  225 歌舞伎町 その3               226 新宿プリンスホテル
   



 西武新宿駅に併設された新宿プリンスホテルを過ぎると、いよいよ今日のゴール地点である、山手線新宿駅が近い。

  227 新宿駅前 その1               228 新宿プリンスホテルを振り返る
   

  229 新宿駅前 その2               230 新宿駅東口へ
   

 池袋と同様、いやそれ以上に人が多い。長距離バスの発着も多いので、チケット店も混んでいる。

  231 格安チケット店                232 雑誌の路上販売
   

 ホームレスが集めてきた雑誌を路上に並べて売っている。アルミ缶と並んでホームレスの貴重な収入源である。



 さて、新宿といえば、スタジオアルタである。笑っていいともが終了してしまうらしいが、アルタの名前も忘れ去られていくのだろうか。

  233 スタジオアルタ                234 新宿駅東口駅前
   

 そして、ついに、新宿駅東口に到着した。要した時間は、昼食休憩を入れて6時間10分、距離は、GPS計測で30.8km、歩数は34719歩であった。GPSの場合、徒歩だと距離が長めに出てしまうので、おそらく、25km程度ではないだろうか。

  235 新宿駅東口 15:28
     

 GPSによる本日の歩行経路


 山手線を半周して、わかったことがある。山手線には、一箇所を除いて踏切はない。つまり、道路などはほとんどが立体交差なのである。そして、埋め立てた海岸線や川によって作られた低地は線路が高架、逆に武蔵野台地を通る部分は、掘割又は切り通しになっているのである。つまり、山手線の線路を見れば、今、自分がどちらの地面を歩いているのかがわかるのだ。これは、鉄道と地形の関係をわかりやすく示す貴重な例であることを発見したのである。

 さて、各駅の性格が全く異なることは非常に興味深かった。駅にも個性がある。ここで、山手線の各駅の乗降客数を見てみよう。

順位 駅 名 乗降客/日 対新宿比 順位 駅 名 乗降客/日 対新宿比 順位 駅 名 乗降客/日 対新宿比
1 新 宿 742,833 100.0% 11 浜松町 153,104 20.6% 21 原 宿 71,472 9.6%
2 池 袋 550,756 74.1% 12 田 町 145,724 19.6% 22 代々木 70,418 9.5%
3 渋 谷 412,009 55.5% 13 大 崎 138,311 18.6% 23 御徒町 67,737 9.1%
4 東 京 402,277 54.2% 14 五反田 130,633 17.6% 24 大 塚 51,963 7.0%
5 品 川 329,679 44.4% 15 恵比寿 130,241 17.5% 25 駒 込 46,988 6.3%
6 新 橋 250,682 33.7% 16 目 黒 103,033 13.9% 26 田 端 44,155 5.9%
7 秋葉原 234,187 31.5% 17 日暮里 99,875 13.4% 27 新大久保 41,545 5.6%
8 高田馬場 201,765 27.2% 18 神 田 97,779 13.2% 28 目 白 37,684 5.1%
9 上 野 183,611 24.7% 19 西日暮里 94,884 12.8% 29 鶯 谷 24,174 3.3%
10 有楽町 164,929 22.2% 20 巣 鴨 76,249 10.3%
                          H24年 JR東日本の公式サイトより抜粋

 1位から10位までは大規模ターミナルまたはそれに準じる駅である。それぞれ有力な別会社線や地下鉄が乗り入れている。それにしても、新宿駅の多さは群を抜いている。3位の渋谷の倍近くである。新宿と池袋が両横綱という感じだ。上野駅はホーム数の割には順位が低いが、これは長距離列車が多いことと、有力私鉄の直接乗換駅ではないからだろう。JR内での乗り換えはカウントされないからだ。
 11位から20位はそれなりの存在感を示す中堅駅、そして21位以下は山手線としては、弱小零細駅である。最下位の鶯谷に至っては、新宿駅のたった3.3%だ。今日周った北半分の駅を
青くしたが、面白いことに、それぞれのカテゴリーでの下位を占めていることがわかる。これからみても、池袋を除けば、山手線は次回歩く予定の南半分のほうが活気があるということになるだろう。


 東京という街がこんなにも多彩な顔を持つことを改めて知った。そしてそこに住み働いている人たちがいる。それぞれの駅は、事前に抱いていたイメージを大きく裏切ることはなかったが、こんなことでもなければ、降り立つことのなかった山手線の各駅を訪れ、街の顔をこの目で見ることができたのは、思いがけない収穫だった。日本一の東京駅はもちろん、神田から上野駅にかけてのマニアックさ、鶯谷駅の猥雑さ、田端駅南口の素朴さ、巨大な池袋駅や新宿駅、上品な目白駅、ヤバイ新大久保駅から歌舞伎町などの全ての街が山手線という線路でつながっている。
 とはいってもまだ半分である。新宿から南半分の山手線の輪が僕を手招きして待っている。

関連サイト ◆山手線一周 後編(2014年3月21日)

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